コラム:自分の可能性を最大限に引き出すために

セルフ・ハンディキャッピング(言い訳癖)
コロナ禍以降、まあまあ気になることが一つあります。
それはレッスンが始まる前に教室に付いた途端、まあまあ張った声で隣にいる仲の良い人に「ああ、今週すごく忙しかったから曲の予習何も出来なかった。全然聴けてない。(練習できてない)」と口にする人がすごく増えているということ。
昔から個人の特徴として、日々の学習や活動に取り組む中で、事前に準備ができていないことを大きな声で言い訳したり、自分自身に無意識のうちに障害を設けてしまう人は必ずいましたが、コロナ禍が明けてからはこういう人が本当に増えたと思います。これは「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれる行動で、失敗を恐れるがゆえに自分の環境に言い訳を散りばめ、失敗した時の言い訳を事前に用意する心理的な戦略です。
「本気を出せば、自分は良い結果を出せる」と思い込む余地を残して、結果が良くても悪くても、自分のプライドを守る作戦です。
特徴
- 過剰な準備の欠如: 生徒が意図的に十分な練習をしない、または準備を怠ることで、失敗した時に「準備不足だったから」と言い訳できる・・・「昨日寝れなかった」「娘が孫を連れてきて・・・」「MCで話す事、何も考えて来てないので、何を話せばいいのかわかりませんが・・・」など
- 物理的な障害の創出: 例えば、練習や発表前に「体調が悪い」と言うことで、パフォーマンスが低下した場合の言い訳を作る。・・・「黄砂が・・」「花粉症が・・」「風邪で喉が・・・」など
- 心理的なストレスや不安の強調: ストレスや不安を理由にして、本来の能力を発揮できなかった場合の保険をかける。・・・「緊張しているのでちゃんと歌えるか分かりませんが・・・」
- 達成目標の低下: 自分自身で設定した目標を故意に低く設定し、達成できなかった場合に「元々今回は本気ではなかった」と自分を守る。
セルフ・ハンディキャッピングのメリットとデメリット
メリット
セルフ・ハンディキャッピング、つまり自分自身に障害を設ける行動には、短期的な利点があると考えられます。しかし、これらの「メリット」は心理的な自己保護の側面を持ち、長期的には個人の成長や成功に対して否定的な影響を与えることが多いです。以下はセルフ・ハンディキャッピングの主なメリットとして認識される点です。
1. 自尊心の保護
- 失敗への言い訳: 失敗した場合、事前に設けた障害(例えば、十分に準備しなかった、体調不良など)を理由にすることで、自尊心を保護することができます。
- 期待の管理: 自分自身の期待を低く保つことで、失敗した際の精神的な衝撃を軽減できます。
2. 社会的評価の管理
- 他人の期待の低下: 自分に対する他人の期待を故意に低下させることで、失敗した時の社会的な評価の損失を最小限に抑えることができます。
- 同情の獲得: 何らかの障害や困難を訴えることで、他人からの同情や支援を引き出すことがあります。
3. ストレスと不安の管理
- 準備や努力の避ける: 過度の努力や準備を避けることで、短期的にはストレスや不安を減らすことができます。
- 期待の圧力からの逃避: 成功への高い期待や圧力から逃れることができます。
4. 自己認識の維持
- 自己イメージの維持: 失敗を外的要因に帰することで、自分自身のポジティブな自己イメージを保つことができます。
注意点
これらのメリットは、主に心理的な安心感や防衛機制として機能しますが、長期的には自己成長を阻害し、リアルな自己評価や成功への道を遮る可能性があります。したがって、セルフ・ハンディキャッピングは一時的な安堵を提供するかもしれませんが、長期的な自己発展や充実感には逆効果となることが多いです。
デメリット
セルフ・ハンディキャッピングが習慣化、あるいは「クセ」になると、個人の成長、学習、そして全般的な生活において様々なデメリットが生じます。以下にその主なデメリットを挙げます。
1. 自己成長の妨げ
- 能力の未発達: 常に自分に言い訳を設けることで、実際の能力や才能を十分に発展させる機会を失います。
- 学習の機会喪失: 失敗から学ぶことを避けるため、重要な学習機会と成長の機会を逃します。
2. モチベーションと自信の低下
- 自己効力感の減少: 常に外的な要因を失敗の理由にすることで、自分の能力に対する信頼と自信を失います。
- 目標達成への消極性: 自己効力感の低下は、新たな挑戦や高い目標設定に対するモチベーションを減少させます。
3. 社会的影響
- 人間関係への悪影響: 常に言い訳をする姿勢は、他人との信頼関係を損ない、社会的なつながりに悪影響を及ぼす可能性があります。ゴスペルなどアンサンブルのレッスン(リハーサル)で「さあ今から声を合わせて歌おう」という時に、「やってきてない」「音が取れてない」と隣の人に言われても、言われた人はテンション下がるだけです。そのことに早く気づいてください。
- 責任感の欠如: 責任を回避する姿勢は、個人の信頼性や責任感を低下させ、職場や学校などの環境においてネガティブな印象を与えます。
4. 心理的・感情的な影響
- ストレスと不安: 常に自分を守るための言い訳を考えることは、精神的なストレスや不安を引き起こす可能性があります。
- 否定的な自己認識: 長期的には、この行動パターンは自己評価の低下や否定的な自己認識を生み出すことがあります。
5. 長期的なキャリアへの影響
- キャリアの機会損失: 能力を十分に発揮しないことで、グループ活動上でチャンスを逃すことがあります。
- グループでの評価低下: 責任を取らない姿勢や常に言い訳をする態度は、グループ内での評価に悪影響を与える可能性があります。
セルフ・ハンディキャッピングのクセは、短期的には自己保護のメカニズムとして機能するかもしれませんが、長期的には自己成長や成功の妨げとなります。そのため、このような行動パターンを早期に認識し、対処することが重要です。
そんな自分を変える対処法
自分の強みと弱みを認識する
まず、自分の強みと弱みを正直に評価してみましょう。自分の能力を過小評価せず、また、改善が必要な点にも目を向けることが大切です。短い人生において自分の苦手な部分ばかりに目を向けるのではなく、強みに対して意識をフォーカスできるようになれば周りにも良い影響力を与えるようになりますし、周りから頼りにされることからの重圧が軽くなります。
目標設定
小さくても良いので、達成可能な目標を設定し、それを達成したときの喜びを感じましょう。目標は具体的で測定可能なものにすることが重要です。例えば歌の場合でしたら、可視化できるレコーディングの環境など。
挑戦を恐れない
新しいことや難しいことに挑戦することを恐れないでください。失敗は学習の大半であり、成長のために必要なステップです。強みや魅力は能力の限界値に近い部分にこそありますので、練習段階では失敗が当たり前でありそれをイチイチ気にする必要はありません。思ったような成果が出ない時に「何がいけないのか?」を考えるよりもさっさと次の方法を試してみる方が大抵の場合は効率的です。
ポジティブなフィードバックを受け入れる
自分自身や他人からのポジティブなフィードバックを受け入れ、自信を持ってください。また、建設的な批評も学びの機会として受け入れましょう。ただ先生の話をすべて理解しようとすると、解ったフリで終わってしまいます。今の時点で新しく理解できたことのみが重要で、難しくて理解できなかったことなどは大概はずっと後で意味が分かるものなので、その時まではあなたにとって重要な事ではありません。
自己反省
毎日の活動を振り返り、何がうまくいったかを考える時間を持ってください。
このアドバイスを実践することで、皆さんは自分の内面の力を最大限に発揮し、より良い学習成果を得ることができるでしょう。私たちは皆さん一人一人の成長を全力でサポートします。自分自身に正直でいること、そして常に前進し続けることを心がけてください。
講師として、皆さんの成長と成功を心から願っています。
投稿者
kingbee33@gmail.com