Clara Ward / クララ・ウォード

ゴスペル史上最高のソリストの一人であり、アレサ・フランクリンに最も大きな影響を与えたシンガー
1924年8月21日にフィラデルフィアで生まれたクララ・ウォードは、ゴスペル史上最高のソリストの1人として広く評価されています。
彼女のバックグループであるウォード・シンガーズと一緒に全米をツアーし、その活動の結果、ゴスペルと言う音楽は教会の礼拝の中で賛美として歌われるだけでなく、エンターテイメント性の高いショー・パフォーマンスとしての一面を確立しました。派手な衣装とポップスタイルのパフォーマンスが、これまでになかった新しい可能性と商業的成功をゴスペルにもたらせました。(結果としてこのことは賛否両論があり、グループと彼女の寿命を縮める要因ともなりました。)
ビジネス面を担当した母親のガートルードは、幼いころから娘クララの歌唱力と妹ウィラのピアノに非凡な才能を見出し、1940年代後半には強力なビジネス・マネージメント力で、このグループを教会サーキットのトップアトラクションの1つに育て上げました。
のちにグループは2人の新しいパフォーマー、ヘンリエッタ・ワディとマリオン・ウィリアムズを迎え入れます。彼女らの力強い声はグループのトレードマークとなりました。マリオンがソリストとして加入したことで、ウォード・シンガーズはグループとしてのピークを迎えました。(1949年に発表された「Surely God Is Able」はゴスペル曲として初のミリオン・セラーとなりました。)
教会サーキットから、ナイトクラブ・サーキットへ。
1940年代のゴスペル・グループが有名になっていく流れとして、① 自分達の属する教会の礼拝プログラムに組み込まれる→② 地域の他の教会にもゲストとして呼ばれるようになる→③州も越え、全米の教会から目玉として呼ばれるようになる(トップ・アトラクション)というのが普通でしたが、ウォード・シンガーズは派手な衣装とそれまでにはなかったステージ構成で、黒人クリスチャン・コミュニティにはとどまらず、白人の富裕層までファン層を拡大しました。
実際、活動範囲を広げたことで、それまで彼女たちを後押ししていた人たちを置き去りにしてしまう形になったようです。「Packin’ Up」という曲は、舞台に大きなスーツケースを模したセットを作り、聴衆には大人気でしたが、一部の純粋なゴスペル・ファンからは「ピエロ」と揶揄されました。その後も活動範囲は広がり、ラスベガスでのショーやディズニー・ランドにも出演しました。
CL・フランクリン、アレサ・フランクリンとの出会い
クララ・ウォードの人生は、キャリアの成功だけを見れば華やかそのものですが、決して彼女にとって幸せとは言い難いものでした。
幼い頃は経済的な事情から彼女の家族は19回も引っ越しをしました。彼女の自伝によれば幼少期にいとこから性的虐待を受け、生涯を通じて母親はクララを「最高の稼ぎ頭」として絶え間なく働かせました。
妹のウィラによれば、母親は彼女たちの恋愛を禁止し、過酷なツアー・スケジュールを課しました。17歳でクララは一度、彼氏と駆け落ちして結婚しますが、それを良く思わなかった母親がートルードは長期にわたるツアーを強要し、元々体がそんなに強くなかったクララは極度の緊張から流産します。そして結婚生活も一年で終わってしまいます。
そんな彼女にとってとても幸せな時間だったのは、デトロイトを拠点とする有名な説教師であり、あのアレサ・フランクリンの父親でもあるC.L フランクリンとの長年のロマンスだったのではないでしょうか?
ウォード・シンガーズは、C.L フランクリンと大規模なツアーを多く行い、クララは長い時間をフランクリンの家で過ごしました。そしてこの時期にマヘリア・ジャクソン(彼女もフランクリンの家族の友人だった)とともに、アレサ・フランクリンを指導します。
後にソウルの女王となったアレサのあのパーフェクトな鼻腔共鳴を作ったのはまさにクララ・ウォードだと思います。(上の動画でもC.L フランクリンの横にクララが座って嬉しそうに弟子のアレサを見つめています)
うつ病・アルコール依存、そして死
1960年代になっても、クララ・ウォードは母親の商品としてツアーを続けます。
歌唱力は若い頃のようなパワーはなくなりますが上手さ(巧さ?)が増し、音楽としてのクオリティは健在でしたが、あまりにショーとして構築され過ぎたパフォーマンスは、ゴスペルの伝統を重んじる多くの信者を失望させました。
彼女の中にもその葛藤があったようで、少しずつ彼女の心は力を失ってしまいうつ病からアルコール依存症になります。
そして1966年5月にフロリダ州マイアミビーチのキャスタウェイズラウンジで演奏中に彼女は倒れます。その後2度脳卒中を起こし、1976年1月16日に48歳でこの世を去りました。
投稿者
kingbee33@gmail.com