意外にもゴスペル界の大スターは下積みの長い苦労人
21世紀の最も人気のあるクワイア・リーダーの一人であるカート・カーは、実は下積みが結構長くて現在の名声と栄光を得るまでに10年以上もブドウ畑で働いていました。
1997年発売の「No One Else」で注目された後、2000年に発売されたCD「Awesome Wonder」でブレイクし、ゴスペル界の大立者としての地位を確立しました。
1964年10月11日、コネチカット州ハートフォードで、教会に属さない家庭に生まれたカートは、13歳のときに自ら礼拝に出席するようになりました。1970年代に教会に通った子供たちは皆、ウォルター・ホーキンス、ジェームス・クリーブランド、アンドレ・クラウチなどがアイドルでした。
「母は私の音楽の才能を信じてくれていました。彼女は私がゴスペルに興味を持っているのを知り、一枚のウォルター・ホーキンスのアルバムを買ってくれたんです」「そのアルバムは文字通り、私の人生を変えました。少なくとも1、2年は毎日聴いていましたし、その曲からピアノの弾き方を独学で学びました」とカートは2011年の雑誌のインタビューで語っていました。
その後、カートはコネティカット大学で美術の学位を取得して卒業しました。大学では主にミュージカルとダンス、そしてクラシック音楽の基礎を学びました。
同じように大学でクラシック音楽の教育を受けたリチャード・スモールウッドに師事し、様々な音楽の影響をブラックゴスペルに取り入れることを教わりました。（カート・カー・シンガーズが昔の讃美歌を声楽の技法を取り入れたアレンジにしているのも、この時代の勉強が役に立っているからだそうです。）
しかし彼にとって最も重要なトレーニングの場となったのは、ジェームス・クリーブランド牧師の指導の下で過ごした数年間でした。「クリーブランド牧師は私に賛美歌やスタンダードなゴスペルソングを教えてくれました」「クリーブランド牧師と一緒に仕事をしている間、私はキャラバンズ、シャーリー・シーザー、マイティ・クラウド・オブ・ジョイなど、ゴスペルの多くの偉大なパイオニアに触れました。この体験が、今日の私の音楽活動を支える基盤になっています。」 とカーは2000年にGospel Industry Today誌に語っています。
彼は1986年にクリーブランドの下でピアニストとして仕事をするようになりました。そして音楽監督となり、クリーブランドが1991年に亡くなるまで、ブドウ畑で働きながらその任に就いていました。
その後、カート・カー・シンガーズを結成し、ミッキー・ハワードの「Love Under New Management」のゴスペル・ヴァージョンを収録した最初のアルバムは、ゴスペル・アルバム・チャートで11位まで上昇しましたが、短期間のスマッシュ・ヒットにとどまりました。
ライト・レコード（1980年代、90年代のゴスペルを語るうえで非常に重要なレーベル。僕の大好きなThe Winans の全盛期はこのレーベルでした。）の閉鎖後、カートはゴスポ・セントリック・レコードと契約し、1994年に出したCD「Serious About It！」は結構話題になりました。
しかし、同時期にレーベルメイトのカーク・フランクリンが大成功を収めたため、フランクリン現象にレーベルのリソースが割かれ、カートや他のアーティストは新作リリースのチャンスを得るのに約2～3年待たされることとなりました。そのため、カートが次のCD「ノー・ワン・エルス」をリリースしたのは1997年となりました。このライブ・アルバムは、10万枚を超える大ヒットとなりました。
2000年に発売された「オーサム・ワンダー」は、ゴスペル界を驚かせ、カート・カー・シンガーズはブラック・ゴスペル界で押しも押されぬスーパー・スターとなりました。全米の教会で突然、このCDの曲が歌われるようになり、最終的に50万枚を売り上げました。
その後しばらくカートは、ロサンゼルスのWest Angeles Church of God in Christのクリエイティブ・ディレクター／音楽担当牧師も務めてました。（名盤 No One Else の舞台となった教会。大礼拝堂はステンドグラスで有名です。このアルバムはカート・カー・シンガーズの他にバック・シンガーとしてアナスタシア、メアリー・メアリー、アンドレア・マクラーキンなども参加。そりゃ上手いわ！）
その後、ウェスト・エンジェルスの音楽監督をジュディ・マカリスターに譲り、コネチカット州ハートフォードのファースト・バプテスト教会の音楽監督に就任。（ここはByron Cage が Presence Of The Lordを歌った教会ですね。）
現在はテキサス州ヒューストンで The Fountain Of Praise教会の賛美主任として教会のために奉仕しています。
