I Want Jesus to Walk with Me / Trad Spirituals
奴隷制時代の伝統的な黒人霊歌
“I Want Jesus to Walk with Me” は、19世紀のアメリカ南部で生まれた、作者不詳のアフリカ系アメリカ人霊歌です。奴隷制のもとで厳しい生活を送っていた人々の間で、楽譜ではなく口伝によって歌い継がれてきました。
歌詞に登場する “tedious journey(長くつらい道のり)” は、信仰者が人生で経験する苦難を表すと同時に、奴隷制の中で自由を求めながら生きた人々の現実とも重なります。「苦しみの中でも、イエスよ、どうか私と一緒に歩いてください」という、非常に個人的で切実な祈りの歌です。

20世紀になると、黒人霊歌を保存する動きの中で楽譜として残され、大学の合唱団や教会のクワイアなどを通して広く知られるようになりました。
その哀愁を帯びたシンプルな旋律や歌い方は、のちのブルースやゴスペルにもつながっています。さらにマリア・ジャクソンやオデッタなど多くの歌手によって歌われ、時代を越えて「苦難の中でも希望を失わず、神とともに歩みたい」と願う歌として受け継がれてきました。
歌詞和訳&聖書照会
Verse 1
I want Jesus to walk with me
I want Jesus to walk with me
イエスに、私と共に歩いてほしい
イエスに、私と共に歩いてほしい
マタイによる福音書 28:20
“Lo, I am with you alway, even unto the end of the world.”
「見よ、わたしは世の終りまで、いつもあなたがたと共にいるのである。」
While I’m on this tedious journey
I want Jesus to walk with me
この長く、つらい旅路を歩んでいる間
イエスに、私と共に歩いてほしい
詩篇 23:4
“Yea, though I walk through the valley of the shadow of death, I will fear no evil: for thou art with me.”
「たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません。あなたがわたしと共におられるからです。」
ここでいう “journey” は、単なる旅行ではなく、人生そのものを旅にたとえた表現として読むことができます。
特に tedious には、「退屈」という現代的な意味だけでなく、この歌では 長く、疲れを覚える、困難な道のり というニュアンスがあります。
「Jesus, walk with me」という願いは、「苦しみを全部取り除いてください」というよりも、“この道を歩かなければならないとしても、一人にはしないでください” という祈りに近いでしょう。詩篇23篇の「死の陰の谷」を歩くイメージとよく重なります。
Verse 2
In my trials, Lord, walk with me
In my trials, Lord, walk with me
試練の中にいる時、主よ、私と共に歩いてください
試練の中にいる時、主よ、私と共に歩いてください
イザヤ書 43:2
“When thou passest through the waters, I will be with thee.”
「あなたが水の中を過ぎるとき、わたしはあなたと共にいる。」
また、ヤコブの手紙 1:2–3 には「試練」というテーマが直接登場します。
“When ye fall into divers temptations; Knowing this, that the trying of your faith worketh patience.”
「いろいろな試錬に会った場合、それをむしろ非常に喜ばしいことと思いなさい。あなたがたの信仰がためされると、忍耐が生み出されることを知っているからである。」
When my heart is almost breaking
Lord, I want Jesus to walk with me
心が今にも張り裂けそうな時
主よ、イエスに私と共に歩いてほしい
詩篇 34:18
“The LORD is nigh unto them that are of a broken heart.”
「主は心の砕けた者に近く、たましいの悔いくずおれた者を救われる。」
ヨハネによる福音書 14:18
“I will not leave you comfortless: I will come to you.”
「わたしはあなたがたを捨てて孤児とはしない。あなたがたのところに帰って来る。」
このVerseでは、最初の「人生の旅」というイメージが、より具体的な苦難や心の痛みへと深まります。
In my trials は、「何も問題がない時にも神と歩きたい」という歌ではなく、特に試練のただ中で一緒にいてほしいという祈りです。イザヤ43章も、「水を通らなくてよい」「火を避けられる」とは言わず、その中を通る時に神が共にいると語っています。この点がこの歌とよく似ています。
そして “When my heart is almost breaking” は、とても人間的な言葉です。聖書にも「broken heart=砕けた心」という表現があり、詩篇34篇では、神はそのような人から遠く離れているのではなく、むしろ「近くにおられる」と語られます。
そのため、この曲全体の中心にあるのは、
「苦難のない人生をください」ではなく、
「苦難の中を歩く時、どうか私を一人にしないでください」
という祈りだと読むことができます。
ゴスペルとして歌う時には、“walk with me” を単に「一緒に歩く」と捉えるだけでなく、「人生の道のりを共にいて支えてください」という意味で感じると、この歌の深さがより伝わってきます。
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投稿者
kingbee33@gmail.com
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