Highway to heaven / Traditional Gospel
トーマス・A・ドーシーの代表曲の一つ
『Highway to Heaven(It’s a Highway to Heaven)』がゴスペルの大スタンダード曲として世界中で広く知られ、歌い継がれている理由は主に以下の4点にあります。
- 「ゴスペル音楽の父」トーマス・A・ドーシーの代表作・・・現代ゴスペルの基礎を築いた巨匠 Thomas A. Dorsey(『Precious Lord, Take My Hand』の作者)や Mary Gardner が手掛けた初期トラディショナル・ゴスペルの名作であり、歴史的価値が極めて高い楽曲です。
- 教会の礼拝・クワイアに適したシンプルで力強い構造・・・メロディがキャッチーで覚えやすく、コール&レスポンス(ソロの先導に対してクワイアが応答する形式)を取りやすいため、ブラック・チャーチの礼拝やクワイアワークショップの定番教材・導入曲として定着しました。
- 普遍的で前向きなメッセージ・・・旧約聖書イザヤ書35章8節(「そこに大路があり、その道は聖なる道と呼ばれる」)やマタイによる福音書(「心の清い者は幸いである」)をモチーフにしており、苦難を乗り越えて天国へと歩む希望をストレートに歌い上げています。
- 数多くのレジェンド歌手による名演・カバーの蓄積・・・プロフェッサー・アレックス・ブラッドフォード(Prof. Alex Bradford)、フロリダ・マス・クワイア(Florida Mass Choir)、ジェシー・ディクソン(Jessy Dixon)、クレイグ・ヘイズ(Craig Hayes)など、何世代にもわたる著名アーティストやマス・クワイアがカバーし続け、スタンダードとしての地位を不動のものにしました。
歌詞和訳&聖書照会
この歌詞は、「天国へ続く道」と「心の清さ」を、聖書の「聖なる道(highway)」のイメージと重ねた表現ですね。特に イザヤ書35章 と マタイ5:8 が強く響いています。
It’s a highway to Heaven / None can walk up there / But the pure in heart
そこは天国へ続く大路/そこを歩めるのは/心の清い者だけ
Matthew 5:8(マタイによる福音書 5:8)
“Blessed are the pure in heart: for they shall see God.”
「心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。」
Psalm 24:3–4(詩篇 24:3–4)
“Who shall ascend into the hill of the LORD? … He that hath clean hands, and a pure heart.”
「主の山に登るべき者はだれか。…手が清く、心のいさぎよい者。」
Isaiah 35:8(イザヤ書 35:8)
“And an highway shall be there, and a way, and it shall be called The way of holiness…”
「そこに大路があり、その道は聖なる道ととなえられる。」
ここでの “highway to Heaven” は、単に「死後に天国へ行く道」というだけでなく、神に向かって歩む聖なる生き方を道路にたとえた表現と考えられます。“pure in heart” は特にイエスの「心の清い人たちは神を見る」という言葉と直接つながります。詩篇24篇にも、「主の山に登る」ことができるのは「清い手と清い心」を持つ者だという、よく似たイメージがあります。
It’s a highway to Heaven / Walking up the king’s highway
そこは天国へ続く大路/王の大路を歩いて上っていく
Isaiah 35:8–10(イザヤ書 35:8–10)
“And an highway shall be there… The way of holiness… And the ransomed of the LORD shall return, and come to Zion with songs…”
「そこに大路があり…聖なる道ととなえられる。…主にあがなわれた者は帰ってきて、歌いつつシオンに来る。」
Isaiah 40:3(イザヤ書 40:3)
“Prepare ye the way of the LORD, make straight in the desert a highway for our God.”
「荒野に主の道を備え、さばくに、われわれの神のために、大路をまっすぐにせよ。」
“the king’s highway” の King(王) は、このゴスペルの文脈では神、そしてキリストを指す表現と見るのが自然です。イザヤ書には、神の民が喜びながら帰ってくるための “highway / 大路” が何度も登場します。そのため “Walking up the king’s highway” は、神が備えた道を、神の国を目指して歩み続けることを歌っていると読むことができます。
つまりこの短い歌詞には、「心の清い者が神を見る」+「神が備えた聖なる大路を歩く」という二つの聖書的イメージが重なっています。
Walking up the King’s highway
王の大路を歩いて上っていく
Isaiah 35:8(イザヤ書 35:8)
“And an highway shall be there, and a way, and it shall be called The way of holiness…”
「そこに大路があり、その道は聖なる道ととなえられる。」
Psalm 84:5(詩篇 84:5)
“Blessed is the man whose strength is in thee; in whose heart are the ways of them.”
「その力があなたにあり、その心がシオンの大路にある人はさいわいです。」
Singing up the King’s highway
王の大路を、歌いながら上っていく
Isaiah 35:10(イザヤ書 35:10)
“And the ransomed of the LORD shall return, and come to Zion with songs and everlasting joy upon their heads…”
「主にあがなわれた者は帰ってきて、歌いつつシオンに来る。そのこうべに、とこしえの喜びをいただき…」
Psalm 100:2(詩篇 100:2)
“Serve the LORD with gladness: come before his presence with singing.”
「喜びをもって主に仕えよ。歌いつつ、そのみ前にきたれ。」
Shouting up the King’s highway
王の大路を、喜びの声を上げながら進んでいく
Psalm 47:1(詩篇 47:1)
“O clap your hands, all ye people; shout unto God with the voice of triumph.”
「もろもろの民よ、手をうち、喜びの声をあげ、神にむかって叫べ。」
Psalm 98:4(詩篇 98:4)
“Make a joyful noise unto the LORD, all the earth: make a loud noise, and rejoice, and sing praise.”
「全地よ、主にむかって喜ばしき声をあげよ。声を放って喜び歌え、ほめ歌え。」
この部分では、同じ “the King’s highway” を進む姿が、walking → singing → shouting とだんだん力強くなっていきます。単に道を歩くだけでなく、歌い、最後には喜びの声を上げながら進むという、ゴスペルらしい高揚感があります。
特にイザヤ書35章では、神によって贖われた人々が「聖なる道」を通り、歌いながらシオンへ帰る姿が描かれています。そのためこの3行は、神へ向かう人生の道を、悲壮な旅ではなく、喜びと賛美に満ちた行進として表現していると考えられます。
また “shouting” はここでは怒鳴るという意味より、聖書やゴスペルの文脈でよくある 「神への喜び・勝利・賛美の叫び」 に近いニュアンスです。
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