ゴスペルの起源・・霊歌とブルース

まだこの世に「ゴスペル」が誕生する前、アフロ・アメリカンが奴隷として苦難の日々を過ごしていた時、黒人霊歌以外に、まったく宗教性とは関係ない日々の暮らしを歌った歌(俗歌)の存在がありました。

それは自分たちの日常をそのまま表現したものであり、苦役を少しでも紛らわそうとした「ワークソング」(労働歌)であったり、日々の苦しみを綴った歌「ブルース」などです。これらは教会で歌われる神への感謝とはまったく無縁のものでした。

でもここでひとつ忘れてはいけないことがあります。黒人霊歌はキリスト教の讃美歌をベースにしたものですが、彼らがたくさんある讃美歌の中から選んだ歌の多くは「天国への希望」を題材にしたものであったということです。勘の鋭い人はお気づきだと思います。ブルースで歌われている嘆きは、まぎれもなく現世に対する嘆きです。そして彼らが霊歌の中で歌う喜びは現世のものではなく、死後天国に行った後で共有できる喜びです。共通していることは、彼らは「現世」に対して、何の希望も持てていなかったということ。「いまを直接的に嘆く歌」と、死後の希望を歌うことで間接的に「現実から目をそらす歌」という解釈もできます。双方に横たわっているものは「現実への悲しみ」です。

ゴスペルの父と呼ばれる「トーマス・ドーシー」が、もとはアンクル・トムという名前で非常にきわどい歌詞のブルースを歌っていたことは有名です。ブルース界のスターであり、もっとも世俗的な人によって「ゴスペル」という音楽がこの世に作り出されたからこそ、いま私たちはそのメッセージの「生々しい力強さ」に心を打たれるのではないでしょうか?

 

 

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